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物語

地主と業者のお話

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むかしむかし、土地を理不尽に奪われた地主がおりました。

地主はそのことを悔やみ忘れきれず、新たな土地を求め、ついに他所の広大な土地を手にいれることができました。

その広大な土地を管理していた者がたまたま無頓着な者で、地主は口達者に巧みに譲り受けることができました。

ただし、その土地には前の管理者が建てた神仏の石碑があり、地主はそれを取り除こうとしましたが、畏れを感じてそのままにしていました。



広大な土地を手にいれた地主は、大きな屋敷を建てることにしました。

周りの住民たちに、前の管理者から土地を得たと批判されないために、石碑を囲むように屋敷を設計し、石碑が住民たちの目に二度と触れないように建てました。








屋敷を建て、地主は考えました。

『この広い土地を利用して町をつくろう』

地主はさっそく、口達者な技術と商売の能力を生かして、各地から業者を呼び、各国の特産物を集め、りっぱな商業の町をつくりました。

商売が発展していくと、次第に住民は裕福になっていきました。

裕福な住民は、豊かな食べ物や豊かな品物を手に入れ、次第に他者の土地や屋敷まで売買するようになりました。





地主は、考えました。

まえに自分の土地を理不尽に奪われた経験が甦ります。

地主はその経験を生かして、ある条例を通達しました。

条例は、住民の取り扱う品物を制限し、住民の商売を規制するものでした。


地主は安心しました。

なぜなら、住民たちは条例のために自由な取引ができなくなったからです。

しかし、中にはあざとい住民もおり、地主に媚びへつらう者もおりました。

そういう住民はそこでの商売が滞らず、地主の恩恵を受け、徐々に力をつけていきました。






しかし、中にはその条例に反発する者もおりました。

たくさんの商売人が地主の独裁的な条例に媚びへつらうなか、ある一部の業者たちは自己の取引を続けておりました。


ある日、とうとう一部の業者たちに、条例違反の通達がありました。

その業者たちは連行され、屋敷の牢屋に閉じ込められてしまいました。

牢屋に繋がれた業者たちは、二度と外に出ることを許されませんでした。


業者たちが嘆き悲しむなか、唯一救いになったのは、牢屋のある敷地内からみえる石碑でした。

その石碑にはこう記されておりました。



『この地を愛し、この地に生きる者すべてに幸ありて、永遠に共に栄えん』




業者たちは、まえの管理者のことを思い出しておりました。

あの時代は、たしかに住民は皆貧しかったが、自由に行き交い、自由に品物を扱い、自由に暮らせていた、と。

いまや外の町には何一つ自由がない。

ただ地主の思惑通りに税を支払うためだけの商売人に成り下がってしまった。


扱う品物も、売れ行きが良いものしか仕入れなくなった。

お金儲けに走る商売人の町を、誰が愛するだろうか。。。





業者たちは考えて、地主に訴えました。

『地主さま、私たちは商売人ですから、一生牢屋にいるというのは堪えられません。私たちは、もうこの土地で商売を二度とせず出て行きます。だから解放してください。』

と。


地主は答えました。

『ならば許してやろう。二度とこの土地で商うことは許されない。他所の辺境地で自由にするがよい』

地主は業者たちを解放してあげました。






朝日がのぼるころ、町には灯火が消え、賑やかな声がひびきはじめました。

町には色とりどりの、同じような品物が並びます。

業者たちは、荷物をまとめて静かにこの土地を出て行きました。